診療室よりこんにちは

春もたけなわとなってまいりましたが、皆さんは日野原重明先生(聖路加病院)をご存知でしょうか。今回はその日野原先生が「私の人生のお手本です」と言われる昇地三郎先生(2013年11月107歳で逝去)のお話です。

昇地先生は、国内外を問わず“健康長寿のスーパー伝道師”として自身の健康法について講演されていました。最も重要視されていた健康法は「一口三十回噛む」ことでした。幼少期、身体の弱かった先生は母親から「一口三十回噛みなさい」と教えられ、なんと100年余り、守り続けて来られました。「何を食べるかではない。いかに食べるかである」さらに「健康長寿は本人の努力が70%、遺伝はわずか30%」と常におっしゃられて、まさに“噛むことの重要性”を説いておられました。

さてそんな先生の歯の状態は70歳代から総入れ歯になられましたが、餅や煎餅、たくあんやピーナッツ、さらにはステーキまで食べておられました。もちろん歯の数は多いに越したことはありません。たとえ歯を失っても、よく合った入れ歯でよく噛む、そしてよく噛めば唾液がたくさん出るので安定もよくなります。先生の健康の源は、噛める入れ歯でした。

歯を失わないことが一番ですが、失われた歯を補うには様々な治療があります。どれも100%元通りになる訳ではありませんが、より良く改善できるように皆さんと歩んでいければと思っている次第です。